留学ビザから就労ビザへ変更する方法と手続きについて

query_builder 2025/01/16 就労ビザ

 日本に留学している外国籍の方が、卒業後、そのまま日本に滞在し、日本で就職したいという場合も多いと思います。


 留学ビザを持っている留学生が日本の企業や団体等に就職する場合、留学ビザから就労ビザに変更する必要があります。ここでは、その変更方法と変更すべき時期、提出書類などについて、簡単に説明します。


留学ビザと就労ビザの違い


 留学ビザ(在留資格「留学」)は、学校に通うための在留資格ですので、原則として、就労することができません。資格外活動許可を申請することによって、週28時間までアルバイトをすることができますので、コンビニや飲食店などでアルバイトをしている留学生も多いことと思います。しかし、資格外活動許可を得ても、週28時間を超えて働くことはできません(学校の夏休みのような長期休暇の場合は、週28時間を超えて働けますが)。就労ビザは、働くための在留資格ですので、フルタイムで働くことができます。しかし、就労ビザとして代表的な技術・人文知識・国際業務(略称:技人国)などは、働ける業務・職務に制限があり、どんな仕事でもできるというわけではありません。技術・人文知識・国際業務は、4年制の大学を卒業していて、大学で学んだ科目と関係のある職務につくというのが要件となっています。たとえば、機械工学科を卒業していれば、機械設計に従事するとか、情報科学を学んでいれば、SEとして働くなどです。コンビニや飲食店の接客などでアルバイトしていた留学生がそのままその仕事を続けていきたいと思っても、その仕事を続けられる就労系の在留資格がないのが現実です。日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者といった身分系の在留資格であれば、就労制限がありませんので、コンビニの品出しや接客、飲食店の洗い場、接客などもできます。


 そういうわけで、現在留学ビザを持って学校に通っている外国人も、身分系の在留資格を取るのでなければ、卒業してフルタイムで就職するなら、留学ビザから就労ビザに変更しなければなりません。就労ビザに変更する際は、職種や職務に合った就労ビザに変更するようにしましょう。


留学ビザから就労ビザに変更する方法と手続について


 日本の大学等や専門学校を卒業生て企業等へ就職する留学生の多くが技術・人文知識・国際業務(技人国:ぎじんこく)という就労ビザを取得するので、ここでも技人国ビザへの変更手続きについて説明していきます。
 実は、就労ビザという名前のビザ(在留資格)はなく、就労できる職務(活動)を定められた在留資格の総称が一般には就労ビザと呼ばれています。在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国ビザ)も数ある就労ビザのうちの一つです。


1.1 留学ビザから就労ビザへの変更の流れ


 留学ビザから就労ビザへの変更の一般的な流れは、大まかに、次のようになります。


1.就職活動・採用活動→2.面接→3.内定→4.雇用契約締結→5.就労ビザ申請準備→6.就労ビザへ変更申請→7.就労ビザ取得→8.卒業(卒業証書を入管へ提示)→9.就労開始


 留学生が就職活動をする場合や、企業が採用活動をする場合、取得したい就労ビザ(たとえば技人国ビザ、特定技能ビザ、介護ビザなど)の取得要件を満たしているか確認する必要があります。要件を満たしていなければ就労ビザへの変更申請をしても不許可となります。そうすると、その留学生は就労ビザを取得できず、雇用契約を締結しても、就労できないことになり、お互いの労力が無駄になるからです。まずは、就職活動・採用活動の段階で、技人国ビザの場合は学歴と職務内容の関連性など、取得したい就労ビザの取得要件を満たしているかよく確認しましょう。技人国ビザの取得要件はこちら。特定技能ビザについてはこちら


1.2 留学ビザから就労ビザへの変更時期(変更のタイミング)


1.2.1 在学中に内定をもらっている場合


 在学中に内定をもらっている場合は、早めに就労ビザへ変更申請することをお勧めします。
 3月に日本の大学等や専門学校を卒業する留学生の場合、卒業前の12月1日から就労ビザに変更申請することができます。ビザ申請の審査には、状況にもよりますが、数週間から3カ月程度を要します。12月から5月ごろまでは入管の繁忙期ですので、4月の入社に間に合わせるためには、余裕をもって準備されることをお勧めします。


1.2.2 卒業しても就職活動・内定待機する場合
 また、卒業してから内定した場合や、内定はしたけれど卒業してから就職するまでに期間が空く場合、留学ビザは、卒業すると切れますので、卒業後に「留学」ビザのままで日本に在留することができません。その場合は、内定待機者用の「特定活動」ビザへ変更する必要がありますので、ご注意ください。すなわち、卒業後に就職活動を続ける場合は、特定活動という特殊な在留資格に切り替えた上で就職活動を続けることになります。この特定活動ビザの有効期間は6か月で、1回に限り更新が認められます。つまり、原則として1年間に限り、卒業後の就職活動・内定待機が認められるということになっています。


1.3 留学ビザから就労ビザへの変更方法


・必要書類の収集


 受け入れ企業からの内定後、雇用契約書や派遣契約書等の契約書を交わし、「留学」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへの変更申請に必要な書類を収集します。


・申請書の提出先(申請先)


 申請書の提出先(申請先)は、原則として、留学生の住居地を管轄する「地方出入国在留管理官署」です。留学生の在学中の住居地の管轄と、就職後の住居地の管轄が異なる場合もあると思いますが、申請時の留学生の住居地の管轄が原則となります。
 また、所属予定機関(受け入れ先企業)の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署や、例外的に採用担当部署所在地を管轄する地方出入国在留管理官署でも申請可能な場合がありますので、最寄りの入管へご確認ください。


・変更申請できる人


 次の方が申請することができます。
 ・留学生本人(原則は、申請人本人です)
 ・申請取次の届出をした、受け入れ先企業の雇用主や採用担当者様(申請取次の届出をして承認されている場合のみ)
 ・申請人の法定代理人
 ・申請人から依頼を受けた申請取次届出済行政書士など(弊所代表も申請取次行政書士です)


1.4 就労ビザへの変更の必要書類


□ 申請人本人(留学生本人)が用意する書類
 ・在留資格変更許可申請書 (Excel)
 ・写真1葉(所定の規格を満たした写真を用意し、申請書に添付して提出)
 ・パスポート
 ・在留カード
 ・履歴書
 ・卒業見込み証明書
 ・卒業証明書(卒業後原本提示)
 ・成績証明書(卒業証明書だけでは学歴と職務の関係を証明できないので)。シラバス等でも可。
 ・専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書 1通
 ・出席証明書(専門学校卒業予定の場合)
 ・資格外活動許可書(許可を受けている方)
 ・その他(就労内容、本人の在留状況等により、追加資料の提出が必要です)
 ※手数料:4,000円の収入印紙(許可時)


□ 会社(受け入れ先企業)側が用意する書類
 ・在留資格変更許可申請書 所属機関用1N.2N (Excel)
 ・雇用契約書(労働条件通知書)
  雇用契約書は必ずしも作成されている必要はありませんが、申請に当たっては、雇用予定者の業務内容、給与、雇用予定期間等の労働条件が明示された書類(労働条件明示書等)の提出が必要となります。また、入社後に派遣する予定の場合、入管では、派遣先で従事しようとする活動の内容によって在留資格の該当性を判断しますので、派遣先企業の概要や派遣契約の内容が分かる資料を提出する必要があります。
 ・雇用理由書(自由書式・A4サイズ2枚程度にまとめる)
 ・履歴事項全部証明書
 ・決算書(P/L, B/S)
 ・会社定款
 ・給与所得の法定調書合計表(税務署受理印のある写し)
 ・その他(就労内容、受け入れ企業の規模等により追加資料の提出が必要です)


 ※カテゴリー1,2の会社(上場企業など)は、申請書類が簡素化されています。


 法務省の入管ホームページでは、必要書類の一覧が公開されていますが、それだけでは、十分ではない場合も多いです。当事務所では、申請人様、受け入れ企業様のそれぞれの事情を考慮し、さらに添付すべき書類があるか、添付すべきでない書類か、判断したうえで、申請書類を準備させていただき、申請人様に署名押印していただいた上で、申請しております。


就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の審査の基準について


留学ビザから就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)への変更申請では、留学生と会社がそれぞれ以下の基準で審査されます。


留学生に対する審査基準


留学生に対する審査基準(要件)は、主に以下のような内容です。


・経歴の要件
主に留学生の学歴が審査されます。たとえば4年制の大学を卒業しているか(もしくは卒業見込みであるか)短大や専門学校を卒業しているか(卒業見込みであるか)。実務経験があれば、それも考慮されます。


・職種・職務の要件
大学、短大、専門学校での履修科目と職種・職務内容が関係あることが必要とされますので、両者があまりにかけ離れている場合は不許可になるケースもあります。


・報酬の要件
雇用契約書や労働条件通知書から、同等の経験年数で同等の業務を行う日本人と同等以上の給与が支払われる予定であることが審査されます。同等の日本人よりも給与が低いと判断された場合は不許可となります。


会社に対する審査基準


会社に対する審査基準は、概ね以下の内容です。


・事業の適正性
必要な許認可を得ているなど、適正に授業が行われているかどうかが審査されます。


・事業の安定性(継続性)
決算報告書の内容などから、引き続き事業を安定的に継続できるかどうかが審査されます。直近に赤字だった場合は、黒字になるような事業計画書が必要となります。


・雇用の必要性
事業内容から、その留学生を雇用する必要があるのか、本人の技能や経験を活かせる仕事かどうかなどが審査されます。


留学ビザから就労ビザへの変更でよくある質問


内定があれば必ず就労ビザに変更できる?


 残念ながら、内定を受けていても100%就労ビザを取得できるわけではありません。特に、技術・人文知識・国際業務の要件を満たしていない場合には、取得できないと考えた方が良いです。 ちなみに、内定を出した留学生が就労ビザを取得できない場合に備えて、一般には、雇用契約書に「停止条件」という項目を入れています。具体的には、「就労ビザを取得できたら雇用契約が有効になる」という条件を設定するのが一般的です


入社日までに就労ビザへ変更できないと不法滞在になる?


 入国管理局の審査が遅れて入社日までに就労ビザを取得できないとしても、直ちに留学ビザが取り消されるわけではありません。「処分(結果通知)がされるとき」または「在留期間の満了日から2か月を経過する日」のいずれか早い日まで、引き続き元の在留資格が有効になります。 結果が不許可であれば、就労ビザへの変更ができないため、不法滞在にならないよう、直ちに出国しなければなりません。


まとめ


 留学生が日本で就職するためには、日本人の配偶者等身分系の在留資格を得るのでなければ、留学ビザから就労ビザへの変更が必要となります。今回説明した通り、就労ビザへの変更手続きには、いくつもの要件や注意点があります。将来日本で働きたいと思っている留学生の方、留学生の雇用を検討している企業や団体の方は、ぜひこの記事を参考に今から就労ビザ取得の準備をはじめてください。


この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます


----------------------------------------------------------------------
----------------------------------------------------------------------

NEW

CATEGORY

ARCHIVE

TAG